東京高等裁判所 昭和28年(ラ)436号 決定
よつて按ずるに、罹災都市借地借家臨時処理法第二条又は第三条所定の権利者は他の者に優先して土地を賃借し又は借地権の譲渡を受けることができるものとせられ、又同法第十条所定の借地権者は対抗要件を備えなくてもその賃借権を以て、一定期間内にその土地について権利を取得した第三者に対抗できるものとせられており、かかる権利者を特に厚く保護しているのである。然るに右借地権を侵害するため、土地所有者がその土地を処分し又は他人のために借地権等を設定し、或はこれらの者が更に第三者に右権利を移転するときは、前記借地権は履行不能に陥り、権利の消滅を来す虞れがあり、切角勝訴の判決を受けてもその執行ができない事態が発生する虞れがある(前記処理法第五条、第七条、第十条参照)。かかる事態に対処するためには、借地権主張の相手方となるべき土地所有者(土地所有者から所有権の譲渡を受け又は借地権等の設定を受けた者或はこれらの者から更に権利の移転を受けた者を含む。以下同じ。)の土地に対する権利の処分を禁止してその相手方を特定せしめ、以て前記借地権者の権利を保全してその実現を可能にするのでなければ、前記処理法の規定は空文に等しくなり、その企図した借地権者の保護を全うすることができないものといわなければならない。この見地からすれば、前記借地権者は占有ないしは対抗要件を伴わなくても、その借地権に基き、仮処分によつて所有者の土地処分を禁止することができるものと解すべきである。